プロローグ
それはある平凡な夜だった。
いつものようにミルラ(乳香)を炊き、オイルキャンドルを灯し
そしてペンタグラムを剣で描いた。
炎で燃え盛るエクソシズムの壁を想像力で身の回りに創造し、
だがその夜は特別な意図があった。
暗黒の地下世界への扉を開くという目的が。
悪名高き、アポノのペテロスの呪文を唱えデーモンを召喚する。
Hemen-Etan! Hemen-Etan! Hemen-Etan!
EL ATI TITEIP AOZIA HYN TEU MINOSEL ACHADON
vay vaa Eye Aaa Eie Exe A EL EL EL A HY!
HAU! HAU! HAU! HAU! VA! VA! VA! VA! CHAYAJOTH.
Aie Saraye, aie Saraye, aie Saraye !
By Eloym, Archima, Rabur,
BATHAS over ABRAC, flowing down,
coming from above ABEOR UPON ABERER
Chavajoth ! Chavajoth ! Chavajoth !
I command thee by the Key of SOLOMON
and the great name SEMHAMPHORAS.
アポノのペテロスの呪文
ヘメンエタン! ヘメンエタン! ヘメンエタン!
エル アティ ティテイプ アオジア
ヒン テウ ミノセル アカドン
ヴァイ ヴァー アイ アー エイエ エクセ
アー エル エル エル アー ハイ!
ハウ! ハウ! ハウ! ハウ!
ヴァー! ヴァー!ヴァー!ヴァー! チャヤホット。
アイエ サラエ アイエ サラエ アイエ サラエ!
エロヒム アーチマ ラブール、
そしてバサスとアブラクサスによって、
我に従いここに来たれ!
アベオールとアベレールによって、
チャバホット! チャバホット! チャバホット!
ソロモンの鍵によって、
我は汝に命令する。
残念ながらこれらの儀式は初心者向きではない。
偉大な魔術師エリファス・レヴィは多くの教えを残したが、
大密議のイニシエーションを受けていなければ、
彼の著作の多くは意味をなさない。
まず四大のエクソシズムを行う必要がある。
火、水、土、風の四つの精霊を呼び、
その後に四と七のコンジュレーションを行う。
それから天使を召喚する。
これら秘教の儀式についても詳細に述べよう。
これらの手順を終えて秘教学徒は地獄の天使、
や悪霊を呼び出すことができる。
デーモン、サタン、悪魔、
様々な呼び方があるが、これらの精霊を従わせることは、
非常に困難であり危険であることは言うまでもない。
それにもかかわらず悪魔と対峙することは、
自己理解の一つのアプローチ法でもある。
なぜこの教えを公開するかというと、
今年から来年にかけて(この書は2024年に刊行された)、
世界的に人類の意識が変わるターニングポイントだからである。
この書は数少ない人々には大きな助けになるであろう。
しかしながら、過去の文明が滅びた時と同様に、
真に目覚める人は数少ないだろう。
残念なことにこれが真実である。
さて、前述のように召喚儀式をおこなうと、
激しい風が起こりはじめ、
窓に叩きつけるように大粒の雨が降り注ぎ始めた。
私、マリア・ステファノは香炉に硫黄と樟脳を注ぎ、
アシュモダイの名を呼んだ。
寝室いっぱいに霧のように香がたちこめていく。
ゴーという風の中に、低く唸るような声が聞こえ始める。
それはやがて、しわがれた声に変わり
「俺を呼ぶのはお前か・・・・」
と耳元で囁き、そして香炉から立ち上る煙の中に、
アラビアンナイトに出てくるような美女が立っていた。
私は後ろの椅子に倒れ込むように座り、右手を差し出し、
頭を三度お辞儀するように倒した。
そのようにして魔術師は松果体に生命エネルギーを上昇させる。
その手を取るように彼女も右手を差し出し、
まるで磁石に金属が引き寄せられるように、
私は意識的に肉体から離れた。
まるで服を脱ぐように、蛹から抜け出る蝶のように、
エイドロンの体で前に歩き出し、
そして私たちは目の前に現れた螺旋階段をゆっくりと降り始めた。
「悪魔のトリル」に似た旋律が、
空間に響きはじめ私たちの背中を押すように、
階段を降りるたびにバイブレーションが重く変わっていく。
奇しい美女と手を繋ぎ歩いている、それが奇妙な悦びにかわり、
背骨の奥のプシケの炎が風に吹かれる火のように揺らめき、
突然目の前に灯りが現れた。
それまで洞窟のように暗かった縦に伸びる空間が照らされ、
アシュモダイは左手をゆっくりと横に広げると、
その空間には過去の輝かしい彼・彼女の功績が、
時には絵画、映像となって壁を彩っていく。
やがて物質の極みという超空間、
ハマスボイドと言われる世界に私たちは到達した。
ここは現実と言われる原子が2倍に存在する。
つまり三次元は48の遺伝子、48の法則から構成される。
(現代科学では1組の2つの遺伝子は未発見である)
ここ超現実では倍の96法則で支配されており、
ここでの物質の密度はさらに過密であり、
それが地獄と言われる複雑で陰惨な世界を構成している。
アシュモダイは手を解くと、
私の前を先導するように豪奢な扉をさし示した。
鎧兜の門番に招かれ宮殿の中に入ると、
彼女は、彼に、
地獄のプリンスに変化して天使のように微笑んだ。
「マリア・ステファノ君、いやハリオス・エストロス。
そう呼んだ方が良い。我々は古くからの友人だからな」
そう言いながら血のように赤い飲み物を盃にいれ
私に差し出した。
私はそれを飲み干しながら彼を睨みつけるように
視線を外さなかったが、
豊穣なワインの香りが鼻奥をつくように刺激する中、
強烈な思い出が太古の眠りから目覚めてマインドを揺さぶり、
彼の言葉の意味を悟った。
古代の都市で我々は友人だった。
当時、主イエスキリストは、まだ一人の素朴な青年だった。
ケドロンと呼ばれた小都市で私たちは夢を語り、
まだ見ぬ世界に憧れていた。
それは二つの文明をまたぐ遠い過去。
レムリアとも呼ばれる今とは全く異なった世界だった。
アシュモダイはマントを翻すと、
赤々と燃える暖炉に盃の残りのワインを注いだ。
「ハリオスよ、こんな形で再開するとは皮肉だな」
腕を組んで玉座というにふさわしい王座に踏ん反りかえり座ると、
「俺は歴史を超えて世界を支配しているのに、
お前はまだ地上でミミズのように生きているとは」
わたしは盃ごと暖炉に投げ込むと、
「地獄の王でいるよりも地上で乞食の方が良いのだ」と返し、
向き合うようにソファーに浅く座った。
だが意外にも、アシュモダイは皮肉に笑った口元はそのままに
うつむくと目を閉じて、
「いかにも惨めなものだ。」
と一言呟くと、私の両手を握りしめたのだ。
「今宵、僕を呼んでくれてとても嬉しいのだ」
そう言うと彼は私を引き寄せ抱きしめた。
「時が迫っているのだ。僕にもそしてこの世界にもだ。」
「あの時のことを覚えているか?
僕が黒ロッジの貢ぎに参入した日のことを?」
そう、あれは太古の昔、
人類がまだ全知全能のことだ。
私たち二人は静かに目を閉じ、エイドロンを脱ぎ、
さらにメタトロンの世界へと浸透していった。
そこはアカシックエネルギーに満ちた空間。
この世界には今も、過去も、未来も同時に存在する・・・・