第3章終わりの終わり
アトランティス三期、ラ・ムー王の治世、
カーン年期567年、
今から一万二千653年前にアトランティス第四の都市、
ムハデラに私は出頭した。
その時の名前を「ハリオス・エストロス」という。
この都市の摂政はドルオネ・レメゲトンという人物であり、
彼は後にインド北部に転生をしたクーツーミー大師である。
ドルオネは非常に憂鬱な表情で私を迎えた。
「火星への旅はどうだったか?」
私に飲み物を勧めると、形だけの笑顔を見せた。
壮麗な街の様子を眺めながら、
盃を手に取ると、私は火星が地球に与える影響を話した。
「地球は新しい時代、それは完全な物質のフェーズに達し、
それは善と悪の戦いの始まりになる。」
すでに惑星連邦は地球を追放し、地球人は迷える子羊であった。
火星の光線が太陽によって増幅し、地球を破滅へと追いやっていた為だ。
やがて暴走して地球だけではなく、太陽系を破壊するだろう。
「それには、枢機卿アルマナトオラの善と悪の法則を理解せねばな。」
火星の統治者サマエルは、したり顔で話に割って入ってきた。
全くだ。理性の時代が始まるアトランティス末期までは、
善と悪という思想などなかった。対立するこの法則。
今日、この言葉はスープの中でさえ見ることができる。
「サマエル、あなたはすべての責任がある。
あなたによってレムリアは滅び、そして今や復活した君は、
このアトランティスの人々を救わなければならない。」
怒りによって、エラを大きく開いたドルオネは彼に詰め寄った。
今やアトランティス人の化石を見つけることは困難だ。
何故ならば、彼らは半物質であり、未発達の体はエラを持ち、
エラ呼吸と肺呼吸を行なっていたからだ。
サマエルは火星からやってきた。
火星人はすでに物質を克服して霊的世界への回帰の旅を始めていた。
その体はまさにギリシアの彫刻のように完全であり美しく壮健であった。
「まさに、私は責任を感じ、石を水に沈めよう。」
彼、サマエルは目を落とし頭を下げて答えた。
石を水に沈めるとは、輪廻の輪から自由になり外れた霊魂を、
もう一度輪の中に戻すことを意味する。
その時、クンダリニーは下降し、彼はすべてのパワーを失う。
霊的な位階、王冠、劔と鎧、
そしてすべての転生の記憶を忘れる。
中国での転生
天使サマエルは、第五番目の現文明、
中国大陸に転生した。
当時の名前は愁里(CHOU-LI)で、周王朝の民衆の一人であった。
その秘教的な教団で瞑想の科学を深く研究した。
私ハリオス・エストロスは彼と共に学び成長した。
各文明では七つの人種を生み出される。現在、第七の人種が形成されつつあり、
全ての人種が生まれ機が熟すと、
地球は大異変を伴って再びエーテルに沈むだろう。
当時、「黄竜教団」では、
「アイアタファン(AI-ATA-FAN)」という、
不思議な楽器を所有していた。
その楽器は四十九の音を奏でることができた。
永遠なるヘプタパラパルシノックの神聖法則、
すなわち七の法則を、秘教に通じた秘儀参入者は知っている。
疑いなく七は音階のことであり、
七つの音階に七オクターブをかけると、四十九の音が得られる。
秘密の教えでは、意識は四十九の段階に分けられる。
当時の「黄竜教団」の修道者は瞑想室に集まり、
東洋式に足を組み、右手を左手の上に置き瞑想した。
輪になってすわり、目を閉じると、
アイアタファンの奏者が、宇宙と私たちに奉献する音楽に、
注意を向け深く深く集中したものだ。
奏者が最初の「ド」音を振動させると、全員が集中した。
次の「レ」音を振動させたとき、集中はさらに深くなった。
私たちは内面に巣くう様々な「主観的要素」と戦っていたのだ。
「主観的要素」それらをとがめ、
絶対的な沈黙を守る必要性を教えようとしていたのだ。
「エゴ」・「我」・「自我」・「自分自身」を構成する、
それらの「好ましくない要素」こそ、過ちを犯す権化であり、
それは無数の実体から構成される。
「ミ」音を振動させたとき潜在意識の第三層に入りこみ、
こうして心の中で(無秩序に)ひしめき合い、
マインドの静寂と沈黙を妨げている、
それら様々な「心理的集合体」の多様性に直面する。
このようにして、私たちは「心理的集合体」を理解していった。
それを成しとげ、
私たちは「ファ」音でいっそう深く潜在意識に入り込んだ。
その音階では新たな戦いが待ち受けていた。
内面に巣くうそれらの欲望の悪魔全員に、猿轡(ぐつわ)を嵌めるのは、
全くもって容易ではない。
「心理的集合体」に静寂と沈黙を守らせるのは非常に困難であるが、
辛抱強くそれを成しとげ、音階の各音と共鳴し、内面に鳴らし続けた。
聖アントニウスの誘惑
「啓発する空」に達する
「ソ」音、「シ」音と続けて、
最高のオクターブ「ド」音でも同じ努力をつづけ、
内面に巣くうさまざまな「非人間的要素」に少しずつ直面し、
ついに、四十九の潜在意識レベル全域の「心理的集合体」に、
猿轡を嵌めることができたのだ。
この時、マインドは完全に静まり、最も深い沈黙に浸る。
まさにその時、エッセンス(魂)は抜け出して、
リアリティーを体験する。
魂こそ霊の本質であり、内面に宿る最も純粋なものである。
この時「啓発する空」に達するのだ。
そのように「啓発する空」に入り込み、「啓発する空」は突然起きる。
その時、この宇宙、すなわち自然法則そのものを、
外見ではなく、あるがままに知ることができるのだ。
三次元世界では原因と機械的結果しか分からず、
自然法則そのものについて理解することはできない。
「啓発する空」が発現する時、
自然法則は、ありのままに私たちの目の前に姿を現す。